今日はスティーヴ・ペリーの24年ぶりニューアルバム「TRACES」(トレイシズ)を聞いての2回目を書こうと思いましたが、
その前にこのアルバムが誕生するまでの経緯を、私なりにまとめたものを書いてみました。
一つは、米国では、STEVE PERRYがかなり盛んにラジオ番組やテレビ番組のインタビューに出演していて、
このアルバムができる経緯や、JOURNEY以降のことについて話していて、
(それらがいろいろなソーシャル・メディアなどに掲載され、シェアされ、見られ)、TRACESを購入する多くの方が、このアルバムが出るまでの経緯や、
ストーリーを理解した上で購入しています。アルバムとその背景にあるストーリーが一緒に届いているといってもいいでしょう。
ところが日本ではそこがあまり伝わらず、アルバムだけの一人歩きで、普通にSTEVE PERRYの復活アルバムとして捉えられがちなので、
(まあPERRYが戻ってきたのですから、当然そうなってしまいますよね)
買ってみてちょっと思ってたのと違った的な評価が多くなるのではないかと思っています。
なので、
今日はまず、このCDが出てくるまでの経緯についてです。すこしでもこのアルバムへの理解が深まればと思っています。
いろいろこちらで読んだり見たものをまとめたり要約(要訳)したりしたもの、
そのつもりで読んでくださいね。なるべく正確に書いたつもりですが。あくまで個人の日記/メモとして読んでください(笑)。
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JOURNEY時代の終わりから自分の中の音楽に対するPASSION(情熱)を失ってしまっていたPERRYは、1994年にソロアルバムを発表したのを最後に
歌うこともなく、人前に出ることもなく、ひっそりと生活していました。その期間が20年以上続きます。
そんな中、2011年にPERRYは知人であるPATTY JENKINSさん制作の、乳がんを克服したの女性たちのドキュメンタリーフィルム”FIVE”の一部分を目にします
(正確にはPATTY JENKINSさんがPERRYにその一部を見せたみたいです。ちなみにPATTYさんはWONDER WOMANのディレクターをされた方です)
その中で短時間だけ映像に登場するある乳がん克服者の女性がPERRYの目に止まります。
この女性が精神科医のKellie Nashさんだったそうです。ここでPERRYはKELLIEさんを初めて目にします。
それがこのインタビューのビデオクリップの5:34のところで登場する映像の女性です。
https://www.youtube.com/watch?v=fP3PkvdPobI&t=23s
PERRYはその場でPATTYさんに聞いたそうです。
”彼女のEMAILを知っているのか?”と。
普段PERRYがそんなことをしないことを知っているPATTYさんは、
PERRYに不思議そうに ”なぜ?”と聞き返したそうです。
PERRYは答えたそうです”彼女の笑顔には何か特別なものを感じる”、と。
(英語では”I don’t know, but there’s something about her smile that’s killing me right now”と言ったそうで、
日本語にそのニュアンスを変えずに置き換えるのは難しいのですが、直訳すると ”自分でもよくわからないのだけど、彼女のスマイルには俺を何か虜にするものがある”って感じです”)
そしてPERRYはさらに言いました。
彼女にEMAILで伝えてみてほしい、知人のSTEVEがあなたを是非ランチにお誘いしたがっているって。。
PATTYさんは承諾した上で、こう返しました。
でもその前に一つ言っておきたいことがあるのだけど、彼女は一度は治る方向に行っていたけど、今は再発して、肺や骨にも転移していて、生きるために戦っている状態なの。それでも連絡取ったほうがいい?と。
それを聞いたPERRYは一度はこう言ったそうです。
それならこの話はなかった事にしよう、って。。。
PERRYは頭の中で自分にこう言ったそうです。。。キャリア(成功)から歩き去ってしまい、母も亡くなり、祖母も祖父もいなくなって、父はなんとか生きている状態で、もうそういうのはいいやって。
でもその直後に、本当の自分に戻って思ったそうです。”Bullshit”と。(”Bullshit”は大きな意味ではウソって意味ですが、この場合は、自分で自分をだましていることに対しての腹立ちの言葉ですね。”何たわごと言ってるんだ”、”それは自分の本心ではない”って気が付いたという意味です)
そしてPATTYさんにEMAILを出すように言ったそうです。
そしてその直後、二人はディーナーに一緒に行って、それ以来、約1年半(18か月)ほとんど離れることなく、
過ごしたそうです。
PERRYは医者から彼女の命はもっても長くないことを聞かされていましたが、
ニューヨークに小さなアパートを借りて、そこで二人で暮らしたそうです。
(”October in New York”はこの時のことを歌っているのでしょうね)
お二人の仲睦まじいお話や、お姿はいろいろあちらこちらに出ています。
よくどちらかが寝てしまうまで二人でお話をしていたそうです。
そういう時かはわかりませんが、
KELLIEさんはこう言っていたそうです。
”This might take me, but it’ll never be able to touch our love.’
(これは(病気は)私の命は奪うかもしれないけど、私たちの愛を奪うことはできない。と)
PERRY自身も途中から、僕たちの愛があればこの病気だってきっと治ると信じていた自分がいたと語っています。
ある日、KELLIEさんはPERRYからある”約束”を引き出すことに成功したそうです。
それが前にも書きましたが、以下の言葉です。
”If something were ever happen to me, don’t go into isolation again.
I think you want to make this all for naught.”
(もし私に何かあっても、また一人で閉じこもらないでね。あなたは過去が
まるでなかった事にしたいんだと思うの)
KELLIEさんはPERRYの悩みを聞いていた、精神分析医でもあります。
KELLIEさんは、PERRYを表舞台に復帰させることによって、自分が亡くなっても、
自分の人生に意味を与えたかったのだろうとPERRYは語っています。
そして、2012年の12月14日に40歳でKELLIEさんは亡くなります。
その後2年間PERRYは悲しみ続けたそうです。
そして18ヵ月後に、以前から知り合いだったEelsというバンドのライブに突然飛び入り的に参加します。これが2014年5月の事です。
これがPERRYの1995年以来初めてのライブパフォーマンスとなります。
以前から知り合いだったEelsのメンバーもなぜこの時、突然飛び入りでPERRYがステージに上がってきたのかわからないと言っています。でもPERRYには時が来たと思う何かがあったのでしょう。
それからPERRYは自分の家にフルスペックのスタジオを作り、必要な人材を探して集めて、曲作りやレコーディングをはじめます。
完全に音楽がPERRYに戻ってきたそうです。
そのときの事をPERRYはこう語っています。
“I wasn’t signed to anybody. I had no management. I funded the record entirely out of my own pocket. I built my own studio. I had to have the freedom to suck – nobody was going to put their foot on the back of my neck saying: ‘Is it done yet?’
https://www.theguardian.com/music/2018/oct/10/i-believed-love-could-cure-cancer-how-grief-sent-steve-perry-on-a-new-journey誰とも契約なんかしてなかった。マネージメントすらなかった。レコードは全部自分の手持ちの資金で制作した。スタジオも自分で作った。俺はやっと売れそうもないものだって堂々と作る自由を手に入れた。これでもう誰かが俺の首の後ろを踏んづけながら”早く完成させろ”なんて言われることもなくなったんだ。と
PERRYはJOURNEYで頂点に到達して、目標を失ってしまって以来、初めて、
明確な目標とミッションを手に入れたわけです。
だから
個人的にはこう思っています。KELLIEさんがいなければ、PERRYがまたアルバムを出すことはたぶんまずなかっただろうと。
もうこの年で復帰することはなかったでしょう。
もう歌唱力で勝負できる年ではないですし、どんなにいい曲を作ったって、いい歌が録れたって、もうメロディー嗜好の時代は終わり、いくらPERRYとは言え、24年ぶりではヒットさせるのは難しいでしょう。
そのリスクを考えたらもう何もやらないほうが無難でしょう。とくにソロアルバムは。
だからKELLIEさんは、そんな状況の中、PERRYが復帰する最高のきっかけとストーリーを作ってくれたと思っています。
そしてPERRYはその約束を果たすべく、何年もかけて戻ってきたわけです。
そしてPERRYのサイトにはこう書かれています。
These songs are special to me.
I respectfully ask that you please listen to them,
And whatever they make you feel,
I thank you for listening.Sincerely,
Steve Perry
ここで注目すべきは上記の2行目の、
”I respectfully ask that you please listen to them,”
で、これは”是非聞いてください”ではなく、
”できることならなるべく聞いてもらいたい”ぐらいの強い感じです。
そして、アルバムの発売日にはボーナストラックを除くすべての曲が
PERRY自身の手によって、YOUTUBEに(私の知っている限り)ノーカットでアップされていました。アーチスト自身が全曲アップは異例ですね。
このアルバムの目的は、売ることではないんですよ。
聞いてもらうことなんです。僅か1年半だったけど、PERRYはその1年半についてみんなに知ってもらいたいんです。
だからみなさん、聞いてあげてくださいね。そう思っています。
なるべく買って聞いたほうがいいですが、そうじゃなくてもいいんです。(笑)
私(筆者)も最初は思ったんですよ、この一連のストーリーはアルバムを売るためのどこか操作されたストーリーなのではないかと。でも、あのインタビューがとても苦手なPERRYが、次から次へと、テレビ番組や、ラジオ番組に精力的に出演している姿、あんなにまでも隠さず個人的なことをいろいろ話して、行く先々でファンと握手をして、サインして、セルフィ―ショットに一緒に入って映り。
それぞれの場所で使われる言葉、言い回し自体は違っていても、その話自体にはしっかりした芯がありました。
どうでしょう。そういうアルバムです。
だから聞こえますか?
会いたくても、会いたくても、会えなくなってしまった人に、
一生懸命に、曲を通じて愛を訴え、俺ちゃんと歌ってるよ、約束通りやってるよと、
どうしてなんだ、どうしてなんだって
歌っている男の歌声を。
是非何度か通して聞いてみてください。
なるべく静かなところで。
最高にふさわしい曲がそろっていると思っています。
最高のリアリティーを持ったアルバムです。
リアリティーを見事に音にした作品です。
それを24年間引っ込んでいた、”THE VOICE” と言われる
男が思いを込めて歌っているんですから。
是非、すこしでもこのアルバムの聞き方に良い影響があればと思い
書いてみました。
きょうはここまでです。
SOURCES / REFERENCES
The Guardian ‘I believed love could cure cancer’: how grief sent Steve Perry on a new Journey
STEREO GUM Watch Steve Perry On CBS Sunday Morning
“I believed our love would cure her cancer” – Great interview with the @guardian, check it out below.https://t.co/VUWHjliW7n
— Steve Perry (@StevePerryMusic) October 11, 2018
こんにちは。
先日は私のブログにコメントをいただきありがとうございました。
今回のスティーヴの新譜についてとても詳しく調べられたんですね。
いつも主観だらけの私は何だか恥ずかしくなります。(^^;
スティーヴ自身様々な思いを乗り越えてきて、今悲しみから
完全に立ち直ったのかはご本人にしかわからないことですが
それらも含めて受け止めてあげることが私達にできることなのかなと思います。
サイト作成のためのコーディングもご自身でできるなんてすごいですね。
私にはそのへんの知識は全くないので感心してしまいます。
また訪問させていただきますね。
ありがとうございました。